OUTSIDE IN TOKYO
Rebecca Zlotowski INTERVIEW

2010年ルイ・デリック賞新人賞を受賞した女性監督レベッカ・ズロトヴスキの長編処女作。主人公プリューデンスを演じる、フランス映画の新しいミューズ、レア・セドゥが実に魅力的な本作の着想は、道端で拾った少女の日記から始まった。海外勤務で父が不在、姉は家にほとんど寄り付かないという状態で、母親を亡くしてしまった17歳の少女が受けた衝撃を、"映画"という時間芸術のアートフォームを駆使して描いた、新人監督の注目すべきデビュー作である。

写真をご覧頂ければお分かりになると思うが、吸い込まれそうになる大きな瞳の魅力に抗いながら、監督ご自身について、本作を巡る評価について、本作自体について、そして、監督が好きな日本映画について、フランス映画祭のために来日したレベッカ・ズロトヴスキ監督にお話を伺った。『美しき棘』は、女性目線で”性”を扱った映画であるといって差し支えないと思うが、自らの内面を見つめ、率直で親密な映画を撮り上げることができる、ひとりの映画作家の誕生を大いに祝福したい。

1. 私自身の性的な欲望は映画に反映されている

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OUTSIDE IN TOKYO(以降OIT):監督作品第一作目の『美しき棘』が、本国フランスのルイ・デリュック賞新人賞を受賞し、カンヌ映画祭の批評家週間でも上映されました。このような高い評価を得ていることをどのように捉えていらっしゃいますか?
レベッカ・ズロトヴスキ(以降RZ):もちろんこうして高く評価して頂いたことは嬉しく思いますし、私の経済的な状況から見ても必要なことでした。本当に想像を超える評価を頂いて、とても私にとっては大切なことだったと思います。但しですね、あまり浮かれてはいないんですね。冷静に受け止めています。というのも、この映画は商業的にはフランスではあまり成功しなかったので、やっぱり冷静にそういう評価とは距離を置いてしっかりと考える必要があると思っています。

OIT:イギリスのガーディアン紙(※)では、ミア・ハンセン=ラブさんらと一緒にフレンチ・フィメール・ニューウェーブという書かれ方をしていましたが、それに関してはどういう感想をお持ちですか?
RZ:私自身は批評家ではないので、映画界でどういったことがおこっているかっていうこと全体を見渡して何か発言するっていうことは出来ませんし、そこまでシネフィルではないんですね。ただ自分と同じ世代の若い女性、だいたいの同じような社会的背景を持った女性で映画を撮る人達が増えているというのは確かですし、そういう意味でそういう括り方をされるっていうのは理解できます。ただ他の映画も全部観ている訳ではありませんし、その記事も読んでいないのでどういう文脈でそういう風に呼ばれたのかっていうのは分らないので、ちょっとそれ以上のことは申し上げられません。

OIT:これが記事です、もしよろしければ後でご覧下さい。
RZ:アリガトウ。
カンヌでも確かに女性映画っていうことが言われたのですけれども、私はそういう見方にはちょっと懐疑的なんです。むしろ社会的な現象として(職業を持つ)女性が増えたということはあるけれども、いわゆるセクシャリティとはまた違うと思うんです。もちろん映画というのはリビドーとか性欲とか、そういったものも描きますのでセクシャリティとも関係はあると思うんですけれども、私にとって、その性、セクシャリティが問題になるとしたら同性愛か異性愛かっていう、そういう観点の方が興味があるんです。ただ単に女性だっていうことの括りにはあまり関心がないですね。

OIT:その性の問題でいうと、監督のそうした意識が映画の登場人物に反映されていたのかと思います。また、ユダヤ系の家庭であることとか、そうした設定は監督の半自伝的な要素があるのか、あるいはフィクションとして組み込まれたのか、その辺はいかがでしょう?
RZ:これは完全なフィクションなんですけれども、長編第一作を撮る場合に自分の中から素材を引き出すっていうことがどうしても多くなると思うんですね。やっぱり自分自身のことはよく知っていますし、唯一の資料というか素材になるものも自分の中にたくさんあるわけです。私自身、フランス人のユダヤ系の家庭の出身ですから、例えば神道の家庭ですとか、キリスト教の家庭を描くよりはずっとリアリティを持った描き方が出来る、そういうことで個人的な私自身との関連性というのはありますけれども、あくまでもフィクションで、特にセクシャリティに関しては映画の中でこの人物の生きる時間の中で経験するものですね、私のセクシャリティとは関係ありません。ただ、それはそれとして正直申し上げますと、最初の質問にも関連するんですけれども、私自身のそういう性的な欲望というものは反映されています。例えば、バイクのサーキットを選んだということは、もしかしたら何かエロティックなフェティシズムがそこに反映されているかもしれない。

『美しき棘』
原題:Belle épine

監督:レベッカ・ズロトヴスキ
出演:レア・セドゥ、アナイス・ドゥムスティエ

2010年/フランス/80分/35mm/カラー/シネマスコープ/ドルビーデジタル

© cHold-up Films et Productions

フランス映画祭2011公式サイト
http://unifrance.jp/festival/2011/


フランス映画祭2011






















(※) http://www.guardian.co.uk/film/
2011/mar/24/
france-women-directors
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