OUTSIDE IN TOKYO
ANDO SAKURA INTERVIEW

いま最注目の女優と問われれば、安藤サクラしか思いつかない。あれもか、えっ、これもか、というくらい、出演作品の公開が続いている。年齢離れした気だるさの中に覗く子供のような純粋さに、スクリーンで目にする時の圧倒的な存在感とリアリティ。それは『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』の、若者2人のロード・トリップに合流する“ブス”でタフな女の子、『サイタマのラッパー2〜女子ラッパー☆傷だらけのライム〜』の借金だらけの旅館を相続した姉御肌の女子ラッパー、そして続くは、長いキャリアを通じて是枝裕和監督の撮影監督も務めてきた山崎裕監督の『トルソ』で、頭も手脚もない(だがペニスはある)“トルソ”に安らぎを求めるOLヒロコの生活にずけずけと入り込んでくる妹ミナにも通底している。それぞれの役で強い印象を残しながら、“安藤サクラ”色を残さない、ある意味めずらしい、女優らしい女優の誕生を予感させる。そんな彼女は奥田瑛二と安藤和津を親に持ち、姉は『カケラ』で長編デビューを飾った安藤モモ子という環境で育った彼女だが、独特の天然さの中にも、彼女独自の世界を切り開いていることが、この話からも感じてもらえるはずだ。

1. 思ったことや感じたことを言葉にするのがとても苦手

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OUTSIDE IN TOKYO(以降OIT):演技の時は本当にふりきっている印象ですが、役ではなく、素でしゃべるのは大丈夫な方ですか?
安藤サクラ:(以降A)私は思ったことや感じたことを言葉にするのがとても苦手なんです。だから感想を言うのも苦手で…。でもそういう表現が苦手だから(こそ)、こういう職業に少しでも興味を持っているのかもしれないですね。自分の言葉に置き換えるのが苦手だから、脚本があって、監督がいて、そこに人がいながら、身体を使って表現するみたいなことに、もしかしたら、ちょっとでも興味を持って、今、こういうことをやらせていただいているのかなと思います。すごく甘えん坊というか、めんどくさがりの発想だと思うんですけど(笑)。

OIT:それでは、あまり仕事以外で人前に出ることも好きではないですか?
A:あまり“得意”じゃないですね。食事会も飲み会もあんまり…。

OIT:人見知りですか?
A:そうですね。あの、髪を梳かしながら続けてもいいですか?(写真を)撮ってからでもぜんぜん大丈夫なので。私、写真とか全く気にしないので。

OIT:はい(笑)、僕らはぜんぜん。何でも好きにしてください。それでも、そこから演技の道に進んだのは、自分を出したい欲求があったからじゃないんですか?
A:うーん、本当にふだんは、何を表現するのも得意じゃないので。例えば、美術部だったし、絵を描いたりもするし、直接表現することもしていたけど、それでも自分の感じたこと…、いや、自分の感じたことでもなくて、やっぱり使うのは身体や自分の頭だったりで、何かをもとに動いたり、まあ、動くというか、何かのエネルギーを自分から発することにとても興味がありましたね。すごく特殊なことだと思っていたし、私の場合、何をやっていても、いつも人に見られる職業だということをすっかり忘れてしまっているんですね。そんな余裕もないですし。それでもとても興味深い表現方法だと思います。

OIT:役に入り込んで演じている時は、完全に入り込んで、周りが見えなくなっていたりするものですか?
A:いや、ぜんぜんそんなことはないです。よくそういうアツい話を聞いても、ぜんぜんよく分からない。うちの父親は、家に帰ってきても、映画を引きずっているんですよね。なんかそれは、そんな自分が好きなんだろうなと、ちっちゃい頃から父を見ながら思ってましたけど(笑)。そういうのとかがあまり分からないのかもしれないですね。

OIT:そんな演技への一歩を踏み出した時はどんな感覚だったんですか?
A::ちっちゃい時から興味を抱いていたんですけど、やっぱり、家にいる父親を見ていると、とても地味な仕事だなというのはありましたね。父の出ている作品も見てなかったし。でもそのうち、そんなに華やかな仕事なんだって気づいて、恥ずかしくなっちゃいました。

OIT:何が恥ずかしかったんですか?
A:いま写真を撮られているのもすごく恥ずかしかったです(笑)。そういうのがちょっと苦手なところがあるから、恥ずかしくなっちゃって。人に、こうなりたいとかは言わなくなりましたけどね。それでも結局、すごくお芝居に興味があったから、高校を卒業する時に勉強しようと思ったんです。別に華やいだ場所に行きたいとかじゃなくて、単にお芝居に興味があったから。それで大学に入ったら勉強しようと思って、ワークショップに行き始めて、感じたことを表現し始めたんです。それで初舞台を踏んでから、今に至っているんですけど。

『トルソ』

7月10日(土)よりユーロスペースにてレイトショー
8月14日名古屋シネマテーク、9月4日シネ・リーブル梅田ほか順次公開

監督・撮影:山崎裕
脚本:山崎裕、佐藤有記
プロデューサー:石毛栄典、越川道夫、山崎裕
音楽:松本章
録音:森英司
音響:菊池信之
美術:鈴木千奈
編集:大重裕二
助監督:近藤有希
制作:田中深雪
出演:渡辺真起子、安藤サクラ、ARATA、蒼井そら、石橋蓮司、山口美也子

制作協力:スローラーナー
製作協力:テレコムスタッフ、ドキュメンタリージャパン
製作:いちまるよん、トランスフォーマー

2009年/日本/104分/カラー/35mm/アメリカンヴィスタ/DTS・SR
配給:トランスフォーマー

©2009 "Torso" Film Partner

『トルソ』
オフィシャルサイト
http://www.torso-movie.com/


『トルソ』レビュー

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